〔弁・抜〕先天主義


エンゲルス『反デューリング論』「第一篇 哲学 3 分類。先天主義」から


……思考のあらゆる分野で起こることであるが、現実の世界から抽象された諸法則が一定の発展段階に達すると、それは現実の世界から分離されて、なにか自立的なものとして、外からやってきた法則、世界がのっとらなければならない法則として、現実の世界に対置されるようになる。社会や国家では物事はこういうふうにおこなわれてきた。純粋数学も、まさしく同じ仕方で、あとから世界に適用されるのである。そのじつ、これは、ほなならぬこの世界からとってきたものであって、この世界のもろもろの組成形態の一部分をあらわすものにすぎず、――また、まさにそうであればこそ、そもそも適用できるのである。(大月書店/マルクスエンゲルス全集)


思考のあらゆる領域でそうなのであるが、ある一定の発展段階に達すると、現実世界から抽象された法則が現実世界から引きはなされて、なにか独立なものとして、すなわち世界がそれにのっとるべき外来の法則として、現実世界に対立させられる。社会や国家に関してこうしたことが行われたように、それと少しも変わらず純粋数学もあとになってから世界に適用されるというかたちになる。ところが実はそれはほかならぬこの世界からとりだされたもので、単にもろもろの構成形式の一部分であるにすぎない、――またもっぱらそれだからこそ総じて適用などということもできるわけである。(粟田賢三訳・岩波文庫